私の妻は,毎日私に食事や入浴の世話をしてもらっています。
何かをしてもらうばかりなので,人のために何かをしたいという気持ちは強いようです。
10年近く前のことです。
8月に入ってから,妻がアパートの小部屋にこもるようになりました。
私は,やせるための運動でもしているのかなと思っていました。
8月15日の朝早く,私が目を覚ますと,隣にいるはずの妻がいません。
また,小部屋にこもったようでした。
しばらくすると,「うわーん」と,子どものような泣き声が聞こえてきました。
あわてて駆けつけると,妻が泣きながら床に散らばったビーズを拾っていました。
その頃通っていた施設で,アクセサリー作りをしていた時のビーズでした。
それを見て,小部屋にこもっていた理由がわかりました。
私に誕生日のプレゼントをしようとして,内緒でビーズのブレスレットを作っていたのです。
誕生日の当日,最後の仕上げに糸を結ぼうとしたら,切れてしまって,泣いていたのでした。
私は,ばらばらになったビーズを受け取りました。
材料費は10円にもなりませんが,とても価値あるものでした。
「何万円もするものをもらうより,俺のために何かをしようとがんばってくれたことのほうが,ずっと嬉しいから」
と,妻を慰めました。
あれから,妻は私があげるお小遣いをためて,私の誕生日を祝ってくれるようになりました。
今年は,誕生日のケーキと,
高価な霜降りの焼き肉を
おごってくれました
(あとで私がお金を補充してあげるんですけど・・・)
「せんせい」は,
妻が私をそう呼ぶ習慣になっているので・・・。
祝ってもらうたびに,あの時の泣き声を思い出して,ちょっとじーんときます。
0 件のコメント:
コメントを投稿