2013年10月14日月曜日

2013年10月14日のできごと

私の妻は,事故で「高次脳機能障害」を負いました。
脳細胞がたくさん死んでしまったので,記憶力が弱く,昨日のことも忘れます。
手が勝手に動くので,危なくて包丁を持てません。
歩くとよろけるので,杖を持っています。
舌がもつれるので,上手にしゃべれません。

何もできないのではさびしいので,施設で毎日訓練を受けています。

7月のある日,彼女は心臓移植手術が必要な小学生の話を聞きました。
アメリカで手術を受けないと死んでしまうけれど,費用が1億7千万円もかかるので,家族と周囲の人々が募金を始めたそうです。1円でも足りなければ,手術を受けられないとのことでした。

彼女は,何とかしなければと思いました。見たこともない子ですが,病気のことを想像すると,どきどきしました。
自分のお小遣いを募金しましたが,まだまだ足りません。
そこで,募金のポスターを手に入れて,近所のお店に持っていきました。断られることもありましたが,たいてい快く貼ってくれました。

それでも,まだ足りない。

もう10月です。早くなんとかしたい。

そこで,女子大に行ってみようと思い立ちました。
2年ほど,大学内にある福祉作業所で,教室やトイレの清掃をしていたことがあったのです。
何かできるかもしれないと思ったので,訓練が休みの水曜日に出かけました。
家を出る時から,募金のチラシをゼッケンのように胸に貼り付けました。
バッグには,募金を入れるためのヨーグルトの空き瓶を入れました。

周囲の人にはどう見えていたでしょう?

でも,思いついたことしかできません。

チラシを胸に貼ったまま,バスを乗り継いで女子大へ。
顔見知りの守衛さんに事情を話しました。
守衛さんもその子のことは知っていて,事務室に連絡を入れてくれました。
事務室では,学内のボランティアサークルに連絡をしてくれると約束してくれました。

でも,まだ足りない。

事務室を出た彼女は,自分でももっと頑張りたくて,でも何をしたらいいのかわからないので,空き瓶を持って学内を歩いてみました。

学生さんたちが冷たいわけではありません。
小さなチラシを胸に貼っているだけでは,すれ違っても読めるわけがありません。
空き瓶も,ふたが閉まっていたそうです。
募金が集まったら,奇跡です。

帰りのバスが出るまで,4時間ほども歩き回ったそうです。

奇跡が起きました。

かつてお世話になっていた作業所の職員さんとすれ違い,その人が
「少なくてごめんね」
と言いながら200円を入れてくれたそうです。
涙が出るほどうれしく,200円が入った瓶を抱えて家に帰りました。

今日の話を妻から聞いた私は思わず,
「おまえ,すごいな」
と言いました。
「でも,見たこともない子のために,どうしてそんなに頑張ったんだ?」
「だって,お金が足りないとシュジュチュできないっていうから,アタチも何かしたかったから・・・」
「助けたかっただけか?」
「うん・・・」
その日の緊張が解けたのか,彼女はさめざめと泣きました。私も少し泣きました。

尊い200円です。私はこれを確実に,「救う会」に届けなければなりません。



妻の,馬鹿だけど純情な一日を,誰かに伝えたくてこんな長文を書きました。
もし,読んでくださった人がいらっしゃいましたら,本当にありがとうございます。

もし,募金に興味がありましたら,リンクも覗いてください。

http://www.save-shunshun.com/

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