中でも劇中歌「Let It Go」は,大ヒットした上にYouTubeでも公開されているから,観たことがない人の方が少ないのではないか。
パワフルな歌声に乗って氷の城が作られていく,そのめくるめく映像と,エルサの可愛らしさとセクシーさが同居した(体の線は,手塚治虫が描く美少女にそっくりだ)姿に圧倒される。
美しい映像に見とれていると,これは「エルサが氷の城に引きこもる後ろ向きの場面」であることを忘れてしまう。
エルサが「The cold never bothered me anyway!」と捨て台詞を残してドアをバン!と閉めたところで私はハッと我に返り,そうだ,これは悲しい場面なのだと思い直した。
松たか子が歌う日本語版「ありのままで」もいい歌だし,上手く訳したものだなと思うが,元の「Let It Go」とはニュアンスが異なる。
「ありのままで」は,悩みやハンディキャップを抱えた人が,もうコンプレックスは捨てよう,本当の自分を隠したりしないで堂々と生きるんだと前向きに歌っているように聞こえる。
それに対して「Let It Go」は,いい子になれなんて私には無理,私は自分の思い通りに生きるのよ,と,厳しい親の躾に反発した娘が家出した歌と読み取ることができる。
こちらの方が,共感できる人は多いだろう。親と子の確執は,どの時代の,どこの国にもあることだから。
余談だが,周囲の期待に応えられない女王というと,ピクサーの映画では「バグズ・ライフ」がある。「トイ・ストーリー」のおもちゃたちから「モンスターズ・ユニバーシティ」のマイクまで,「頑張ってるのに上手くいかない人たち」を生み出すのはピクサーのお家芸だ。だから,ピクサーは最高なのだ。
歌っているエルサは,初めは暗い色の衣装を着て,暗い表情をしているが,歌が進むにつれて妖艶な美女へと変貌していく。
地方のお嬢様が家出して,都会で夜の蝶として開花する感じだ。
清楚な女王様が,わずか3分で妖艶な魔女に,ダークサイドに堕ちていくのだ。そのダイナミックさ,鮮やかさは見事だ。見とれるしかない。
見とれながら,ふと「自分が持て余すほどの力をもっていながら,周囲から認められない悲しさとともにダークサイドに堕ちた」,有名な人がいた事に気付いた。
ダース・ベイダーである。
エルサはダース・ベイダーだったのだ。
ダークサイドに堕ちたベイダーを改心させたのが息子のルークなら,エルサの凍った心を解かしたのは妹のアナだ。
そもそも,ベイダーは師匠とのコミュニケーション不全が原因でグレてしまったのだった。そして,エルサが引きこもったのも,原因はアナとの心のすれ違い,コミュニケーション不全だった。
しかし,ベイダーとエルサには大きな違いがひとつある。
純情なアナキンがダークサイドに堕ちるまで,エピソード1から3までの3本の映画,合計6時間半も要したのに対して,エルサはわずか3分,映画の冒頭から数えても30分ほどである。
パダワンだの評議会だの,「パドメは僕のことがわからなかった」だのと,グズグズしながらのベイダー誕生シーンでは,とてもEP4での憎々しくも強いベイダーと同一人物には見えませんでしたよ(T_T)
それに比べてエルサの堕ち方の鮮やかなこと!これぞ映画の醍醐味という陶酔感があった。
ジョージ・ルーカスは「アナ雪」を観て反省するべきだ。
今度のスター・ウォーズはルーカスの手を離れてディズニーに移った。
期待してますよ(^^)
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